ペットと一緒に宿泊できる施設や犬連れOKの飲食店などが昨今ますます目につくようになり、愛犬が家族と一緒に遠方へ出かける機会も増えてきたと感じます。ご旅行の際や、動物病院へ行くときなど、車に乗せる機会も多いことでしょう。そんなときに心配なのが愛犬の“車酔い”や車内での安全な過ごしかたです。犬は私たち人間と違って車酔いについて自分で予防したり、苦痛を言葉で訴えたり、シートベルトを締めて静かに乗っているということができません。愛犬を安全に健康的に目的地へと連れて行くためには、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。今回は、愛犬との車移動の際に、飼い主さんがしてあげるべきことをご紹介します。まだ愛犬と車に乗ったことがないという方はぜひチェックして備えてください。いきなり本番当日を迎えるのではなく、事前に短い時間・短い距離のドライブをして愛犬を車に慣れさせていただくのがベストです。愛犬とのドライブに向けて、本記事を参考に準備をすすめていただけるよう、わかりやすく解説します。

犬を車に乗せる前に確認すること

愛犬を車に乗せる時のポイントは、愛犬が落ち着いて乗っていられる状態を作ってあげることです。もしも愛犬が“車に乗る”という状況に既に慣れているとしても、毎回、次の点には気を配ってあげてください。

トイレを済ませる

乗車前にトイレを済ませることが理想的です。長時間のドライブの場合は1時間ごとにトイレ休憩を兼ねたリフレッシュタイムを設けて、愛犬が外で身体を伸ばせるように工夫しましょう。

リラックスできる環境をつくる

車の中は、愛犬にとっては非日常だったり緊張する場所だったりもします。愛犬は車内で車用ケージやクレートなどに入ることになりますが、その中で愛犬がリラックスして過ごせるよう、いつも使っている毛布やタオル、おもちゃなどを一緒に入れてあげるとよいでしょう。
車内の温度管理や、愛犬に直射日光が当たらないようにすることも大切です。車の前と後ろでは温度差があるため、必要に応じてハンディファンやサーキュレーターを活用するのがおすすめです。

やってはいけない危険な乗せかた

愛犬を車に乗せる時に大切なことは、①愛犬の健康(体調)と②安全運転ができることの2つです。これらを守るために我慢しなければいけないこともあります。愛犬と一緒に車に乗るとき、やってはいけないことは何でしょうか。

車内で自由に動ける状態にするのはNG

愛犬を車内でフリーの状態にしてはいけません。
愛犬のふとした行動が、ハンドルやアクセル・ブレーキの操作の邪魔になる可能性があるためです。もしもドアや窓のロックを外してしまったら、事故につながる危険もあります。
「うちの子は大人しいからフリーでも大丈夫」「いつも車では眠ってしまうから、クレートは使わなくていい」などと考える飼い主さんもいらっしゃるかもしれませんが、絶対にやめましょう。
急ブレーキを踏まなければならない状況になったときや、万が一の事故の際、愛犬がフリーで過ごしていると、愛犬にケガをさせてしまう可能性が非常に高くなります。愛犬の安全を守るためにも、車に乗せる時は専用のケージやクレートなどを使用してください。

膝の上や、助手席にのせるのはNG

愛犬を膝の上や助手席にのせてはいけません。
仮にリードを付けているとしても、何かのはずみでリードが取れてしまう可能性があります。思わぬことで愛犬が運転者の操作や視界の妨げになるかもしれません。また、事故でエアバッグが展開し、愛犬が飼い主さんとエアバッグに挟まれてけがをする恐れもあります。愛犬がさみしがるから助手席にのせたいという場合は、助手席にとりつけられるクレートを使ってください。
誰も乗っていない助手席に愛犬を座らせる、助手席や後ろに乗っている同行者の膝の上に愛犬を座らせるといった行為もおなじ理由からNGです。車の中とはいえ、外はお家の中とは違う様々な刺激でいっぱいです。思いがけないきっかけで愛犬が興奮状態に陥ってしまうこともありえます。愛犬がしっかり固定できる専用のケージ等を使用しましょう。

窓から顔を出させるのはNG

走行中の車の窓から犬の顔や手足、鼻などを出させてはいけません。
助手席から顔をのぞかせていればサイドミラーで後ろが見えなくなりますので、危ないですし、道路交通法違反につながる場合もあります。また高速道路などかなり速いスピードで走るときは、小さな小石などの飛来物でもかなりの衝撃になる場合があります。愛犬が車から顔を出しているときに何かがぶつかってくるかもしれませんので、窓から顔や体を出させないようにしてください。

愛犬に車で留守番をさせるのはNG

どんなに短時間だからと言って、愛犬をひとりで車に置いてはいけません。
実際に、ほんのちょっとの間だったのに駐車していた車両が盗難されて留守番させていた愛犬も一緒に…というケースがありました。直射日光や気温についても心配ですし、ドアや窓のロックを何かのはずみで解除してしまわないという保証もありません。愛犬の車中での留守番はとても危険です。

犬の車酔いの症状と対策

犬も車に酔います。どのくらい酔うのか、酔いやすいのかはかなり個体差が大きいですが、基本的には成犬よりも子犬の方が酔いやすいです。車酔いをさせない方法は“慣れさせる”ことと言われていますが、そのほかにはどのような注意点や対策があるでしょうか。

犬の車酔い対策

直前の食事はNG、乗車の2時間前にごはんを食べさせておく

できれば食後3~6時間の間に車での移動を済ませるのが理想的です。
空腹すぎるのもよくないのですが、万が一気持ち悪くなってしまったとき、胃に吐くものがない方が犬も苦しくないようです。

車用の芳香剤を使用しない

嗅覚が優れている犬にとって、芳香剤やタバコ、ガソリン臭さなどは苦痛です。車酔いを引き起こすきっかけになってしまうこともあるので、芳香剤やタバコのにおいがつかないようにし、換気をしっかりしておきましょう。

酔い止めを飲ませておく

長時間のドライブや車が苦手な犬を乗せて運転しなくてはならない場合は、予め動物病院で相談して酔い止めを処方してもらうこともできます。

こまめな休息をとる

トイレ休憩だけでなく、身体を伸ばし、外の空気に触れさせてリフレッシュを。

車酔いの症状と処置方法

いろいろ対策を練っても、車酔いをしてしまったら…。そんなときは愛犬の症状を見て適切に処置しましょう。犬の車酔いは、人と同じ原理で起こります(耳の奥の平衡感覚が、車の揺れなどについていけず、前庭や三半規管などが刺激されて気持ちが悪くなる)。症状としては次のとおりです。

  • よだれが大量に出る
  • 寒くないのに震える
  • 生あくびを繰りかえす
  • 落ち着かない様子でソワソワしたり、心細く鳴いたりする
  • 吠える
  • ドライブ中に愛犬がこのような様子を見せる時は車酔いの可能性が高いです。悪化すると、嘔吐や下痢をする、泡を吹くという症状が出る場合があります。症状がひどいときは、ひとまずドライブを中断して獣医師に相談するほうがよいかもしれません。
    もし症状が軽いなら、適切に対処し、愛犬の様子を見てドライブを再開してください。

  • 車を止め、外に出てリフレッシュさせる。
  • すぐに車を止められない場合は、窓を開けて外の空気を入れ、換気しましょう。

  • 車内の温度を下げる。
  • 冬場、暖房がきいていると余計に気持ちが悪くなってしまうようです。ひとまず設定温度を下げて様子を見ましょう。

  • クレートに目隠しをする。
  • 見える景色がどんどん変わることが車酔いに繋がるケースもあるので、すっきりと気分が切り替わったあと、クレートに毛布などで目隠しをして外が見えないようにしてあげると楽になるという子もいます。

    はじめてのドライブでも安心!準備と持ち物リスト

    車で愛犬とお出かけしたいと考えている方や、その予定がある場合は、愛犬をお迎えしたら早めに車に慣れさせておくとよいと思います。子犬がワクチン接種を終えて健康で落ち着いており、お散歩の練習が順調に進んでいれば、ドライブの練習を始めることが出来ます。小さいうちに車内のにおいや環境、クレートやケージに入って車で出かけることになれていれば、比較的、車酔いしにくく育つといわれています。

    ドライブにむけて

    練習する

  • エンジンを切った状態で、飼い主さんが抱っこしたり、クレートなどに入れて乗せたりして反応を見ます。
  • 徐々に慣れていくようであれば、エンジンをかけて車の振動にならします。このとき走行はしなくて構いません。まずは車の物音などにしっかりなれることが大切です。
  • クレートなどに入れて少しだけ走行します。はじめは、ただ近所を一周して自宅に戻るだけで構いません。乗っていられたらおやつを1つ、など決めても◎。
  • 何度もいろいろなところへ車で行ってみる

    近くても、公園や広場などに何度も車で出かけていき、出先で一緒に遊んだり楽しんだりして過ごします。“車でお出かけするといいことがある”と覚えてもらいましょう。乗せ方などは、長距離のドライブをするときと同じです。走行中はなるべく快適に過ごせるよう、揺れにくい道を選んで短時間からスタートしてください。
    必要に応じて&慣れるためにも、動物病院にも車で行って大丈夫です。ただし、病院に行くときだけ車に乗せていると、“車に乗ると嫌なところに連れて行かれる”と覚えたり、病院での嫌なこと(注射など)がストレスとなったりして、ドライブの際に車酔いしやすくなることがあります。
    ドライブは、必ず“楽しいこと”の方が多く起きるように飼い主さんがうまく仕組んでいくのがコツです。

    基本の持ち物

  • リード、首輪
  • クレート(またはドライブ用のケージ、キャリーなど)
  • トイレシート
  • フード、食器、おやつ
  • 水、折りたためるような携帯タイプの水飲み
  • いつものおもちゃ、毛布、タオルなど(普段使っているもの)
  • 掃除用のタオル
  • ビニール袋、消臭スプレー(香りなし)、ウェットティッシュなど
  • 愛犬がすごすクレートやケージ内にトイレシートを敷いておけば、万が一の際も車の汚れが気になりません。フードやおやつは一回分ずつなどの少量に小分けしておき、取り出しやすい場所で管理を。暖房が直接当たらないよう気をつけましょう。クレートやキャリーは愛犬の安全のため車内に固定する必要があるので、バンドなども併せて準備を。
    たびたび休憩をとることになるので、ドライブ中はリラックスのために首輪を外したいという場合でも、手に取りやすいところにリードと首輪をセットしましょう。

    まとめ

    飼い主さんがどんなに頑張って工夫してみても、車が好きな犬、嫌いな犬、酔いやすい犬、そうでない犬というのはいます。これは私たち人間と同じように体質や個性が犬にもそれぞれあるためです。愛犬がどうしてもドライブが苦手なようであれば、別の移動方法を考える必要があるかもしれません。もしまだ愛犬が小さいのであれば、少しずつポジティブな体験を重ねさせてあげることで車が好きになってくれる可能性もあるでしょう。
    ドライブの際に愛犬が粗相をしたり、具合が悪くなったりして、楽しみにしていたお出かけを中断せざるを得なくなったとしても、愛犬を責めたり叱ったりしないでおおらかに受け止めていただければと思います。万が一の際の車酔い対策と、愛犬の乗車ルールをしっかり守って、楽しいドライブをしてください。

    By petia

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