掃除機だけではなかなかキレイにならない犬の抜け毛。犬の毛は年間を通して少しずつ生えかわりますが、中にはさらに大量の毛が抜ける“換毛期”がある犬種もいて、日々の抜け毛対策に悩む飼い主さんは少なくありません。また、体臭やトイレシートなど、犬を飼っていることで気になる衛生面やにおいの課題もあります。これから犬を飼おうと考えている方の中には、部屋やケージの掃除方法が気になる、うまくキレイにできるか心配という方もいらっしゃることでしょう。
今回は犬の抜け毛やにおいに対して効果がある掃除方法や、掃除の際なるべく効率的にきれいにするためのポイントやコツをご紹介します。抜け毛の仕組みや構造についてもわかりやすく解説しているので、これから愛犬をお迎えしようと考えている方は、お世話の参考にしてみてください。

犬の抜け毛が特に気になる季節

まずは犬を飼っていると最も気になる“抜け毛”のしくみを解説します。
一般的に、犬の被毛はある程度まで伸びたらそれ以上は伸びず、毛根が退行して抜け、そこからまた新たな被毛が生えてきます。1本の毛が伸びる長さには犬種によって差があります。被毛がある程度長くなるのを長毛種、ほんの数センチほどの長さしかない犬たちを短毛種と呼んでいます。こうした被毛の長さとは別に、生えかたとしても2つのタイプに分けられます。年間を通じて全体的に生えかわるタイプと、年に2回の換毛期がありそこで大量の毛が一気に生えかわるタイプです。

  • シングルコート:毛が薄く、年間を通じて全体の毛が少しずつ生えかわるタイプ。
  • ダブルコート :被毛が分厚く2層構造で生えているタイプ。年間を通じた抜け毛に加え、年2回(春と秋)特別に大量の抜け毛が生じる“換毛期”がある。
  • ダックスフンドやポメラニアン、柴犬、ゴールデンレトリバーなど多くの人気犬種がダブルコートを持っています。これらの犬種は、下の層の被毛(アンダーコート)が季節に応じて生えかわります。春になると夏に向けて空気の通りやすい夏毛に、秋になると冬に向けて温かく保温効果の高い冬毛になり、過ごしやすいよう調整できるようになっているのです。春と秋の換毛期はそれぞれ1か月ほどの期間ですが、フワフワのアンダーコートが一斉に生えかわるため大量の抜け毛が発生します。それに加えて、上の層の被毛(オーバーコート)は年間を通じて少しずつ生えかわりますので、換毛期だけでなく日常的にしっかりブラッシングや掃除をしていく必要があります。
    プードルやヨークシャーテリア、マルチーズなど長毛の小型犬、イタリアングレーハウンド、ダルメシアンなどはシングルコートで被毛の薄い犬種です。プードルなどの長毛種はなかなか毛が抜けないので抜け毛のケアは楽ですが、伸び続ける被毛をトリミングサロンなどで定期的にカットする必要があります。イタリアングレーハウンドやミニチュアピンシャーなどは短毛のシングルコートで最も被毛が薄いタイプの犬たちですので、日々の抜け毛はありますが比較的量は少なめです。体質的に皮膚への刺激や寒さに対しては非常に弱くなっていますので、防寒具などを使ってしっかりケアすることが大切です。
    どのような被毛のタイプでもメリット・デメリットはそれぞれにあり、各犬種に合ったお手入れ・部屋の掃除対策が欠かせません。

    抜け毛を放置するのはNG!愛犬に健康被害が…

    どのような被毛タイプであっても、多かれ少なかれ抜け毛は生じます。犬の抜け毛は気がつくと部屋中に散らばっているものと思いがちですが、実は被毛同士が絡まって体表に付着したままになっている毛の方が多いです。生えている毛の絡まりをほぐして汚れを落とす目的だけでなく、体表から抜け毛を除去するためにも、定期的なブラッシングをしましょう。
    もしも犬の抜け毛を放置してしまうと、愛犬はもちろん飼い主の人間にとっても健康を損なう恐れがあるので気をつけなければなりません。

    抜け毛による被害

    犬の抜け毛には、雑菌や皮脂、フケ、唾液などが付着しています。酸化すれば悪臭の原因となるうえ、ノミやダニが発生する可能性もあります。犬の体表にこのような抜け毛が付着したままになってしまうと通気性も悪くなり蒸れやすいため皮膚炎の原因になります。さらに犬の体そのものがノミやダニの温床となるので、次第に犬自身が悪臭を放つように…。
    また、飼い主さんたちがこのような状態の愛犬に触れたり、愛犬の抜け毛が空気中を舞うような室内で生活したりすることで、元々健康な方であっても喘息やアレルギーなどの症状が出てしまうことがあります。

    抜け毛被害に効果的な対策

    ブラッシングやシャンプーで愛犬の身体を清潔に保つこと、抜け毛の多い時期は特に室内の清掃や換気にも気を配っていただくことが大切です。

    犬がいる部屋の徹底掃除ポイント

    毛布やクッションなどの布製品に突き刺さったり、衣服に絡みついたり…なかなか取れない犬の抜け毛や部屋のにおいにお悩みの飼い主さんも多いと思います。こまめに対応することが一番のコツですが、なかなか難しいこともあるでしょう。それでもポイントを押さえてやることで、より掃除しやすく、効果的にきれいにすることができます!
    ※あると便利なグッズ

  • コロコロできる粘着テープ
  • ゴムブラシ
  • ウェットシート
  • 消臭スプレー、掃除用スプレー、エタノールスプレーなど
  • 掃除に使う消臭スプレーは、ペット用のものを購入することも手作りをすることもできます。一般的なものを使用する場合は、香料や入っている成分によっては愛犬がいるご家庭には適さない場合も多いので、ペット可といった記載があるものを選ぶようにしてください。ウェットシートを使う場合も、犬にとって危険な成分が入っていないかどうか確認を。
    手作りをする場合、犬のオシッコ臭に効果的なのがクエン酸液です。
    水200mlに対して小さじ1~1.5杯ほどのクエン酸を溶かしてスプレーするか、布にクエン酸液をつけて汚れた個所を拭き取るだけできれいになります。オシッコやこびりついて落ちない汚れには、クエン酸の代わりに同量の割合で重曹を溶かした重曹水がよくききます。
    クエン酸も重曹も人間が口に入れても問題ないもので、安価で愛犬のためにも安心です。ドラッグストアやスーパー、通販などで手に入ります。
    ゴムブラシは、布製品やマット、ラグなどに絡まる犬の毛を取り除く時に便利です。ホームセンターや100円ショップなどで購入できます。

    ケージ

    お留守番中や普段の時間をハウスで過ごしている犬にとって、最も汚れる場所がケージやサークルの中です。ケージの掃除の際は、中に入れているものを全部出して一気に片付けてしまいましょう。
    まず、ハウスの金網の一本一本に付着した唾液などが悪臭の原因になることも多いので、ウェットシートやスプレーをかけてケージ本体を拭き掃除します。
    ハウスの中にトイレトレーを設置している場合は、トイレシートの交換の際にトレーそのものも拭くか、中性洗剤で洗ってきれいにするとにおいもすっきりとれます。
    最後はケージを設置している床の汚れを。掃除機をかけてしまうか、ウェットシートなどでさっと拭いて抜け毛やゴミ、汚れを取り除きましょう。

    床・壁

    室内に散らばった抜け毛は、ウェットタイプのフローリングシートや雑巾を使うか、掃除機を使うのがおすすめです。フローリングの床などに抜け毛が散らばっている場合、ついほうきなどで掃いてまとめたくなりますが、抜け毛は想像以上に軽くフワフワとしているので舞い上がって散らばってしまう可能性が…。ほうきよりも掃除機や拭き掃除の方が手っ取り早いのです。ただし掃除機の中に抜け毛が溜まった状態になってしまうと、掃除機がにおいや雑菌の繁殖源となるため、掃除がすんだらすぐに掃除機内のゴミを捨ててしまいましょう。
    フロアマットやラグを敷いている場合、ゴムブラシでこすると絡めとれます。
    トイレまわりや食餌スペースは壁も汚れやすいので忘れずに拭き掃除を。
    畳のお部屋の場合はクエン酸や重曹は使用できませんので、畳にも使えるペット用のクリーナーやエタノールスプレーを選んでください。

    布製品

    犬の抜け毛や唾液などが付着しやすい布製品は、洗濯機に入れる前に粘着テープやゴムブラシである程度抜け毛を除去し、軽くてもいいので下洗いをしておくとより一層きれいになります。
    そのほか抜け毛対策のための便利グッズとして、衣類などの洗濯物と一緒に洗濯機に入れる専用のスポンジが販売されています。洗濯機の中で水に浮いてきた抜け毛をスポンジがからめとってくれるため、衣類への再付着が防げるという商品です。乾燥機能がついているドラム式などの洗濯機なら、市販のドライヤーボールを使うと静電気が抑えられて乾いた衣服から抜け毛がとりやすくなります。

    におい対策

    愛犬のブラッシングやシャンプーを適宜行い、室内を衛生的に保っていればにおいはかなり抑えることができます。空気清浄機や朝晩の換気などを取り入れればよりすっきりと過ごせると思います。時間のない朝や冬場の換気は手が回らないこともあるかもしれませんが、においが気になるなと感じていらっしゃるようであれば、1日のルーティンに取り入れてみてください。
    犬のにおいは抜け毛だけが原因というわけでなく、耳や口臭、肛門腺などから発生している場合も多いので、隅々まで観察して愛犬の健康のためにもこまめなグルーミングを心掛けましょう。

    掃除機を使うと臭くなる!?掃除機や部屋のにおい対策

    犬を飼いはじめてから、なんだか普段使っている掃除機が臭くなってきた…と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。愛犬の抜け毛にはにおいの元や雑菌が付着してしまっているので、掃除機に吸いとった抜け毛やゴミを溜めたままにしてしまうと、そこからにおいが発生してしまいます。掃除機の内部に付着した汚れにも要注意です。
    もし、「フィルターや吸ったゴミをこまめに捨てていても排気が臭い!」という場合には、少量の重曹を床にまいて掃除機で吸うとイヤなにおいを軽減させることができます。コーヒーの粉(ドリップ後の粉を完全に乾燥させたものでOK)にも消臭効果があり、同様の使い方をすることも可能です。ただしコーヒーのにおいがうつってしまうことにはなるので苦手な方は注意してください。
    少し手間はかかりますが、掃除機をかける前にフローリングシートや雑巾、粘着テープなどでできるだけ抜け毛を除去してから掃除機を使うという方法もおすすめです。

    抜け毛対策

    犬の抜け毛対策には、まずはしっかりとブラッシングをして除去すること、定期的にシャンプーをすることが大切です。それでも部屋中に散乱してしまう抜け毛には、次のポイントを押さえて掃除をしてみてください。

  • 掃除は高いところから低いところへ
    部屋の隅から中心に向かって掃除をすすめると抜け毛がまとまりやすいです。
  • 抜け毛を舞い上がらせない
    はたきやほうきは基本的に使わないほうがよいでしょう。
  • エアコン、扇風機、空気清浄機のフィルターやハネ、カバーも忘れずに
    季節ごとに使う家電は、シーズン前に一度しっかりと掃除をしてから使い始めましょう。
  • いつもの掃除に加えて、気づいた時に手近な道具でこまめな“とりあえず掃除”もする
    手の届くところに粘着テープやゴムブラシ、ウェットシートなどを用意しておいて、余裕があるときに手近なスペースだけでも掃除を進めておくとかなり楽になります。
  • 家具の配置をまとめて掃除しやすいスペースを
  • ベッドやソファなど大型家具は、高さを調整して、家具の下を掃除しやすくする
    掃除機やフロアモップ、ワイパーなどが届かない隙間は抜け毛や汚れが溜まりやすいです。犬を飼うことが決まったら、迎える前に家具の配置を見直し、掃除道具や家具の高さ、角度などをチェックするのがおすすめです。
  • まとめ

    犬を飼っているとどうしても気になるにおいや抜け毛。最適なグッズを使い、ポイントを押さえて部屋を掃除することができれば、見違えるほどすっきりキレイになります。ケージの金網の拭き掃除やトイレトレーの洗浄などは、一見手がかかるように感じられるかもしれませんが、ルーティンに組み込んで習慣づけてしまいましょう。ケージやトイレトレーを購入する際に、掃除しやすいかどうかという視点も取り入れて選んでみては。
    また、普段から愛犬のグルーミングをこまめに行い、換毛期には毎日しっかりブラッシングをして抜け毛を除去しておくことも大切です。

    By petia

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