これから犬を家族として迎えようと考えているのであれば、愛犬を選ぶ際には“だいたいどのくらいの散歩時間がベストな犬種なのか”という点も考慮に入れることが大切です。
今回はいくつかの人気犬種を取りあげ、大きさごとに散歩時間の目安について解説します。散歩の際の注意点などもご紹介しますので、新たに犬を飼いたい方や、迎え入れた愛犬の最適な散歩時間がわからないという方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
犬種別の散歩の目安
犬はそもそも活発で散歩や運動が好きな生き物ですが、その程度には差があります。それぞれの犬種にとって必要な散歩時間の目安は「①大きさ」と「②犬種タイプ」によって大まかな目安をつけることができます。
出来上がるまでの交配の過程や歴史によって、犬種ごとに犬の体型や本能などの点で、性格や体力、身体能力に生まれつきの差が生じているのです。
一般的に狩猟犬や牧羊・牧畜犬、そり犬などは活発で運動能力が非常に高いです。こうした犬種は、身体が小さくても散歩時間は長くなります。一方、愛玩犬は激しい運動に向かない体形・骨格をしている犬種やおとなしい性格の犬種が多く、比較的散歩時間はあまり長くなりません。
以下では、大きさ+犬種タイプを組み合わせて、大まかな散歩時間のパターンをいくつかご紹介します。犬によって個体差はありますが、犬種選びの際の目安や、愛犬との散歩時間の見直しにお役立てください。
小型犬の散歩時間
小型犬には愛玩犬としてのルーツをもつ犬種が多いので、他のサイズの犬に比べると運動量は全体的に控えめです。運動量の比較的少ない犬種を選べば、集合住宅や散歩時間があまり長くとれない方でも飼いやすいといえるでしょう。1~2kmの距離をのんびり歩く散歩が基本のスタイルとなります。
ただし、中には中型犬~大型犬並みの運動量を持つ犬もいます。小さくてアクティブな犬が飼いたいと考えている方は、特に身体能力が高く運動量の多い小型犬の中から選んでみてはいかがでしょうか。
運動量が多い犬種
イタリアングレーハウンド、シェットランドシープドッグ、柴犬、ジャックラッセルテリア、ダックスフンド(カニンヘン、ミニチュア)など:1日の散歩量は、30分~1時間程度×2回ほど。
牧羊犬や狩猟犬をルーツに持つ小型犬は運動量が豊富で、長めの散歩が必須です。散歩とは別に、ボール遊びや室内遊びをしたり、お休みの日にドッグランや走れる公園に行ったりして思い切り身体を動かせるようにしてあげるのがおすすめです。
特徴的な体形を持っているダックスフンドなどの場合は、運動することは好きですが、長時間通しての運動や段差、飛び跳ねなどは身体に負荷がかかって腰を痛めてしまうこともあるので、様子を見ながら休み休み遊ばせるようにしてください。
運動量が少ない犬種
チワワ、マルチーズ、ヨークシャーテリア、パグ、パピヨンなど:1日の散歩量は、20~30分程度×1~2回ほど。
室内でトイレが済ませられる場合は、天気が悪い日は室内遊びだけでも運動量が足りることもあります。短頭種(パグなど)は呼吸器系が弱く、長時間にわたって運動や散歩をさせることで身体に負荷がかかってしまいますので、短い散歩を何度か行うとよいでしょう。
小型犬の散歩における注意点
5kg以下~10kgほどの犬たちが小型犬と呼ばれています。体格差が大きく、片手に収まるほど小さい犬がいれば、抱えるのが大変な犬もいます。身体能力の点でも非常に個体差が大きいです。散歩の際は、愛犬の様子を見ながら長さや内容を調整しましょう。
おとなしい小型犬であっても毎日の散歩は必須です。散歩を嫌がる犬は、運動が必要ないわけでなく、何か散歩に行きたくない原因があるはずです。原因を解消し、短い時間でも散歩に行くようにしてあげてください。
中型犬の散歩時間
中型犬は比較的犬らしい体型の犬種が多く、ほとんどの犬種が活発な性格をしています。中でも牧羊犬や狩猟犬として活躍していた犬種は、特に身体能力が高くスタミナ抜群で運動好きです。基本的には2km以上の距離を早足で歩く散歩スタイルとなるでしょう。
運動量が多い犬種
アメリカン・コッカー・スパニエル、シベリアン・ハスキー、ビーグル、ボーダー・コリーなど:1日の散歩量は、1~2時間×2回ほど。
身体能力が高く、ドッグスポーツなども好きなボーダー・コリー。探索活動が好きで長い距離を歩きたいビーグル。そり犬としての豊富なスタミナを持ち、走ることが大好きなシベリアン・ハスキー。と、犬の性格は様々ですが、いずれもかなりの運動量が必要です。運動不足になると著しいストレスが溜まりますので、散歩は欠かさず行きましょう。十分な時間の散歩ができないときは、時間を見つけてドッグランや広い公園で思い切り走ったり、ボール拾いやおやつ探しのような遊びを取り入れたりと、エネルギーをうまく発散させることが大切です。
運動量が少ない犬種
ダックスフンド(スタンダードサイズ)、バセットハウンド、ブルドッグ、フレンチ・ブルドッグなど:1日の散歩量は、30分~1時間×1~2回ほど。
身体的に激しい運動には不向きな特徴がある犬種は、中型犬の中でも比較的運動量が少なめです。ただし、いずれも運動や散歩が嫌いな犬種ではありません。
バセットハウンドやブルドッグはおとなしい性格で身体が重いため、走ったり遊んだりすることには適しませんが、スタミナは抜群です。愛犬の様子を見ながらのんびりと散歩を。ダックスフンド、フレンチ・ブルドッグは活発な性格の子も多いですが、体型的に激しい運動や長時間の遊びには不向きなので、緩急をつけた散歩や遊びで発散させてください。
中型犬の散歩における注意点
中型犬以上の大きさの犬を飼う場合は、基本的に1時間以上の散歩を朝夕行う必要があると考えた方が良いでしょう。個体差もありますので、愛犬の様子を見ながら調節してください。
大型犬の散歩時間
大型犬は基本的にスタミナ豊富で身体能力が高く、運動が大好きです。1日2回の散歩は必須で、1回に4km前後は歩くことになるでしょう。速足で歩いたり、時には駆け足になったりする場合も。体力に自信があり、犬との時間を十分にとることが出来る方、飼育スペースにゆとりのある方でないと飼育が難しいといわれています。性格は穏やかで聡明な犬種がたくさんいるので、条件が合えば一緒に暮らしてみたいと考える方も多いようです。
運動量が多い犬種
アフガン・ハウンドやボルゾイ、サルーキなどのサイトハウンド、秋田犬、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、ドーベルマンなど:1日の散歩量は、1~2時間×2回ほど。
オオカミや鹿などの大型獣を狩猟していたサイトハウンドは、山岳地帯などの広大な大地を駆けまわるスタミナと身体能力を持っていて非常に俊足です。ゴールデンレトリバーや秋田犬と言った狩猟犬、訓練性能の高いドーベルマンなどもとても運動量が豊富ですので、散歩や運動の時間は十分にとる必要があります。
毎日の散歩の他に、自由に走り回れる環境を用意してあげた方が良いでしょう。
運動量が少ない犬種
チャウチャウ、ボルドー・マスティフ、ナポリタン・マスティフなど:1日の散歩量は、30分~1時間×2回ほど。
大きな体格でのしのしと歩くこれらの犬種は、激しい運動や走ることなどは得意ではありません。しかし大きな身体を維持するために全身の筋肉を保つ必要があり、また散歩に出かけること自体は好きな場合が多いので、まずは毎日散歩に行くことが大切です。
歩幅が大きいので、飼い主さんも必然的に速足になると思いますが、散歩中に走ったり遊んだりすることはあまりないようです。体調を見ながら、筋肉を落とさないように飼い主さんが散歩の量をコントロールする必要があります。
大型犬の散歩における注意点
大型犬の散歩の際は、突然の引っ張りや吠えかかりに気を付けましょう。大きな犬は、犬が苦手な人や身近に犬がいない人、小型犬などにとって、かなり迫力のある存在です。力もとても強いので、ちょっとしたことが思わぬけがに繋がらないとも限りません。
愛犬自身を守るためにも、マテや呼び戻し、フセなどのトレーニングをしっかり行って、飼い主さんが愛犬をコントロールできる状態で散歩に出るようにしましょう。特に狩猟犬は動くものを追う習性を持っているので、例えばふいに遠くの小動物や自転車などを追って愛犬が走り出そうとしたとき、飼い主さんはしっかりと止められなければなりません。トレーニングだけでなく、飼い主さん自身の体格や力も必要です。
ミックス犬の散歩時間
ミックス犬はいわゆる雑種と呼ばれる犬たちなので、純血種と違って血統から犬の体質や性格などを判断するのが難しい場合が多いため、基本的に身体の大きさで考えます。親犬の犬種が純血種だったり、親犬の性格や体質・体型が分かっていたりする場合は、これらを元にある程度予想します。
ミックス犬はとくに個体差が大きいので、愛犬の様子を見ながら調整しましょう。
散歩をする際の注意点
呼吸の様子に注意する
年齢によって体力は変化しますし、体調次第では長時間の散歩がつらいこともあります。
愛犬の成長やその日の体調に応じて、最適な散歩量やコースを見直してみてください。たとえば、辛そうに歩いる時や呼吸が早く苦しそうな場合は、体調に対して運動量が多すぎる可能性があります。帰宅時に愛犬がのびのびとした様子で、短く「ハッハッ」と荒めの呼吸(パンディング)をしている状態がベストな散歩量です。散歩途中で愛犬が苦しそうにしていることに気づいたら、様子を見て休憩をはさむなどの工夫を。逆に、全く呼吸が上がっていなくて物足りなさそうな様子であれば、散歩時間や運動量が十分ではない状態です。
気温に注意する
犬は暑さにめっぽう弱い生き物です。夏場の散歩は日照時間を避け、愛犬の体調に応じて長さ・回数を変えてください。冷却グッズの使用やこまめに水分補給を行うことも忘れずに。
寒い時期は、犬種によっては必要に応じて防寒具を身に付けたり、日の出ている時間帯に散歩ができるよう調整しましょう。
年齢に応じた散歩を
まだ散歩に慣れていない子犬のうちは、散歩に出てもなかなか歩かないこともあります。外の刺激に慣れておらず、警戒して進めなくなってしまうためです。散歩デビューさせた愛犬が歩かなかったとしても「うちの子は散歩がいらないんだ」と判断せず、歩くまで待つ、広い公園などに連れて行って様子を見るなど工夫してうまく歩けるように導いてください。
シニア犬になり、足腰が弱って散歩に行くのが難しくなった場合は、体調が安定している日に無理のない範囲で外に連れ出してあげるとよい刺激になります。お気に入りの場所や、やわらかい芝生の上を少し歩くだけでも◎。
多頭飼いをしている場合の対策
体格や好きな散歩コース、必要な運動量がそれぞれ同じような犬の場合は、数頭一緒に散歩ができます。大きさや年齢が異なる場合、スタミナや運動能力に差がある場合などは、似たような犬ごとにわけて散歩に行くほうがよいでしょう。
犬種選びのポイント
例えば、なかなか散歩に行く時間のない忙しい方が、運動量の豊富な大型犬を飼育するのは、犬にとっても飼い主さんにとってもかなり我慢と工夫が必要になってしまいます。犬を飼ったら、基本的には毎日欠かさず散歩に行く必要がありますが、犬種によっては短い散歩が適している犬もいれば、非常に運動量の豊富な犬もいます。まずはライフスタイルやご自身の性格に合った犬種を選ぶことが大切です。
ただ、小さくておとなしい犬種だと思って迎えた子犬が、思いがけず大きく成長したり運動大好きに育ったりして、予想外の散歩量が必要になる可能性もあります。そんなときは、愛犬にあわせてご自身の生活を工夫することが求められるかもしれません。
まとめ
愛犬にとっては、散歩の時間は1日のうちで何よりも楽しい時間の一つです。大好きな飼い主さんとのびのびと体を動かし、たくさんの刺激を吸収することで、犬は心身ともに充足して、元気に生きることができるのです。犬種や個体差、年齢だけでなく、その日その日の体調によっても散歩時間の調整が必要な場合がありますので、飼い主さんも散歩の時間は愛犬に集中し、愛犬の様子を観察しながら楽しく過ごしていただければと思います。